会社の手元資金の目標値は当初「月商1カ月分」にする理由
最優先で確保しておくべき資金の内訳
何度も言いますが、会社が継続的に事業を行っていくために必要なのは、現金です。
それでは実際、手元にどれくらいの資金があればいいのか。
「最低でも月商の3カ月分は必要」
「社長が交通事故などで急死しても社員や家族が困らないように、6カ月分の月商を用意しておくべき」
ビジネス本や経営者向けの講演会などでも、意見はさまざまです。
もちろん、手元資金は多いに越したことがありません。
しかしまずは、月商の1カ月分を目指してください。これは翌月の売上がゼロだったとしても、必ず必要になる金額です。たとえば仕入れの支払いや、社員の給料、家賃、銀行の返済額などにあたります。
最優先で確保しておくべきは、固定費です。人件費、家賃、水道代および光熱費です。
次に必要なお金は、仕入費です。取引先への支払い、つまり原価分の金額です。
最後に、できれば銀行の返済も滞らないことが理想です。
この3つの支払いができれば、急場はしのげます。
月商3カ月分を手元に持つ企業はほとんどない!?
「本当に、たった1カ月分でいいのか?3カ月分なくても大丈夫か?」
これから事業を始める人、創業して間もない経営者は不安に思うかもしれませんが、月商の3カ月分や6カ月分の蓄えを目指すのは、会社が成長してからで十分です。
そもそも中小企業で、月商3カ月分の資金を手元に持っている企業がどれだけあると思いますか。
ほとんどありません。
多くの中小企業は、月商1カ月分か、多くても2カ月分の資金しか持っていません。
しかし、気持ちを弛(ゆる)めないでください。「月商1カ月分の手元資金」は、必ず持っておくようにしましょう。
いつ、何が起こるかわからないのが、ビジネスです。海外市場の影響で急に売上が下がったり、自然災害が発生して工場や本社の建物が潰れてしまうなど、経営努力とは関係ない外部要素でアクシデントが発生したとき、資金がなければ何も手を打つことができません。
「なすすべもなく会社が潰れてしまった」という事態は避けたいものです。
【第12回】 会社の手元資金の目標値は当初「月商1カ月分」にする理由